最近ではインプラント治療は特別に珍しい治療ではなくなり、多くの方が手術を受けて失った歯の機能を回復しておられます。インプラントとはどんな治療なのか、よくあるご質問を交えてご説明します。
目次
インプラントとは?
インプラントは、歯を失った方が噛む機能を回復させるための治療です。
インプラントの構造
インプラント治療は「フィクスチャー」と呼ばれるチタンでできたネジのような人工歯根を、歯を失った場所の顎骨の中に埋め込み、2~3ヶ月して骨と人工歯根がくっついたら、その上に被せ物をつけて元の歯のような形にします。
インプラントの適用例
- むし歯、歯周病などで歯を失った場合
- 生まれつき歯の本数が足りない場合
- 事故やスポーツなどで歯を失った場合
歯科医師なら誰でもインプラント手術が行えますか?
インプラント治療は外科手術が必要で、顎の骨にドリルで穴を開けて、人工歯根を埋め込みますので、感染を避けるためにも清潔な環境下での手術が絶対に必要となります。
インプラント治療を標榜する歯科医師なら、誰でもインプラント手術を行うことができますが、血管や神経を避けて正確な位置に人工歯根を埋め込まなければならないなど、高度な技術が要求されます。
そのためインプラント手術を受ける前には、インプラント手術の実績が多く、高い技術をもっており、信頼できる歯科医師を見つけることが大切になります。
インプラント治療には年齢制限がありますか?
骨が成長途中の子供は、インプラントを埋め込むと周りの歯や顎骨の発達に影響を及ぼす場合があります。インプラント手術をするのは顎骨の成長が止まってからの方が好ましく、その年齢は女性は18歳、男性は20歳くらいです。
一般的にインプラント治療を受ける患者さんの年齢は40~60代が中心になっています。しかし中には事故や怪我によって歯を失った20代の方もおり、90歳を超えてインプラントをした高齢の患者さんもおられます。
骨の成長が止まってからは、何歳までインプラント可能という年齢制限のようなものはありません。骨の量が十分あって持病のない健康な方でしたら、何歳でも手術可能です。
インプラントと天然歯は何が違うの?
「インプラントは本物の歯と変わらない」といわれることもありますが、天然歯にはある「歯根膜(しこんまく)」がインプラントにはありません。
私たちの歯は顎の骨に支えられていますが、直接骨に接しているわけではなく、歯根膜という0.2mm程度の膜を介して接しています。そして、天然歯を失うと同時に歯根膜も失われます。
インプラント体とその周りの骨とは隙間がなく、くっついた状態です。一方、天然歯の歯根の周りにはクッションの役割を担う歯根膜という組織があります。歯根膜の働きにより、ものを噛むと歯はわずかに沈み込みます。
またこの歯根膜の中には、噛んだ時にかかる圧力を鋭敏に感知して、噛む力をコントロールするためのセンサー(受容器)もあります。
インプラントにはこのようなクッションもセンサーもないため、ものを噛んでも骨の弾力によるほんの僅かな沈み込みしか生じません。
インプラントの噛む力はあごの骨の周りの骨膜、噛むための筋肉、あごの関節などにあるセンサーによってコントロールされますが、歯根膜にあるセンサーに比べ「感度」が劣るため、かみ合わせには十分に注意する必要があります。
また、インプラントの周り粘膜(歯肉)は天然歯と異なっています。
天然歯では、歯肉はエナメル質と付着上皮と呼ばれる部分で、その下の結合組織はセメント質と結合し、細菌などが容易に侵入できないようになっています。
インプラントにはそのような構造はありません。その結果、天然歯に比べて、細菌がインプラントと粘膜の間に侵入しやすい構造になっています。
そのため、細菌によって炎症が起こるのを避けるためには、徹底した歯ブラシによるインプラント周囲の清掃と定期的なメインテナンスが重要となります。
インプラント治療ではまずどんな相談をすればいいですか?
インプラント治療を希望されている患者さんが来院される際には、初回のカウンセリングを行います。
カウンセリングでは、患者さんが長年抱えている歯の悩みや、今までに受けてきた歯科治療の中で不満点や改善を希望する点など、思っていることを出来るだけ歯科医師に伝えましょう。
今後の治療に関する疑問や希望、歯の悩みなどを遠慮なく相談し、わからない点があれば、出来る限り話し合って事前に解決しておくことが大切です。
インプラント手術は痛くないの?
インプラント手術の際には、虫歯の治療の時と同じ局所麻酔を使用します。人工歯根の埋入本数が多く、手術時間が長い場合でも、静脈内鎮静法という点滴麻酔を用いて、うつらうつら眠っている間に手術を終える方法もあります。
手術中に痛みを感じることはありませんが、麻酔効果は一定時間しか持続しないので、手術後には痛みが出ることもあります。そのため術後は鎮痛薬を服用します。術後に長期間痛みや腫れが継続する場合は、相当の歯科医師に問い合わせしましょう。
歯が3本連続でない場合はインプラントでブリッジに出来るの?
歯を3本連続で失った場合は、2本のインプラントを土台としてブリッジにすることが可能です。インプラントを3本埋入するよりも治療費を抑えることが出来ます。
天然歯を土台にしたブリッジでは、噛む力はあまり出ないのですが、土台をインプラントにすると、良く噛めるようになります。
インプラントに関するQ&A
インプラント治療は、むし歯や歯周病によって歯を失った場合や、生まれつき歯の本数が足りない場合、事故やスポーツなどで歯を失った場合に適用されます。
骨の成長が止まってからは年齢制限はありません。ただし、骨が成長途中の子供は顎の発達に影響を及ぼす可能性があるため、成長が止まった後が好ましいです。
インプラントには歯根膜がなく、歯根膜による感度やクッションの役割がありません。また、インプラント周りの粘膜も天然歯と異なっており、細菌の侵入しやすい構造です。
まとめ
インプラントは外科手術を伴いますので、患者さんが治療内容を理解して治療を受けることを決めるまでには、事前に様々なことを知らねばなりません。
疑問点をそのままにして手術を受け、こんなはずではなかったと思わないためにも、カウンセリング時に出来るだけ様々な質問をして、インプラントへの理解を深めておきましょう。