「矯正をしたまま楽器をするのは痛いですか?」と患者様に聞かれることがあります。今日は、矯正治療を行うと楽器ができるのか、痛みなどはあるのかについてご案内します。
痛い楽器は我慢すれば矯正できる?
歯列矯正には、ワイヤーブラケット矯正やインビザラインなどのマウスピース矯正の種類がありますが、楽器を吹く方には、ワイヤーブラケットの表側矯正(普通矯正)をおすすめします。
矯正装置が唇に触れ痛みを感じるけど、我慢すれば問題ないと思われるかもしれません。確かに、痛みには慣れていきますが、歯の動きを妨害する動作は避けた方が良いです。例を挙げれば、口でリードをくわえることは、矯正装置による歯の動きを妨害します。木管楽器(エアリード以外)は該当します。その場合は矯正治療を開始するタイミングを考える必要がありますので、歯科医院でドクターやスタッフにご相談ください。
矯正により影響を受けやすい楽器とは
学校の部活動や趣味の一環で楽器を吹く方もおられるでしょう。楽器で歯科矯正に影響があるのは、吹奏楽の吹の部分の楽器で、管楽器と分類されるものです。それぞれ、ご紹介します。
フルート・ピッコロなど穴の開いた部分に息を入れて音を出す楽器
下の唇をへこみに当てて、上の唇を下へ伸ばして息を入れる方法です。
歯にかかる力は少ないのが特徴です。
クラリネット・サックスなど1枚のリードを振動させて音を出す楽器
上の前歯を当てて上唇を被せ、丸めた下唇と下の前歯で楽器を支えて、前に押す(唇側)動きで音を出します。そのため、前歯が出ている出っ歯(上顎前突)・奥歯が噛み合うと口が閉じられない開咬という不正咬合の場合は、矯正治療の妨げになる可能性があります。
オーボエ・ファゴットなど上下の唇を巻き込みながら2枚のリードを振動させるように息を吹き込み音を出す楽器
歯はリードに触れないようにしながらも口はしっかり閉じるため、口元の筋肉(口輪筋)を鍛えられます。
トランペット・ホルン・トロンボーンなど上下の唇にマウスピースを当てて息で唇を振動させて音を出す楽器
唇をマウスピースに長い時間圧迫させるため、前歯への負担が大きいのが特徴です。歯並びがガタガタしている叢生・開咬・噛み合わせが深い過蓋咬合などの歯並びの方は、吹きにくいと思われる楽器の可能性があります。ワイヤーブラケット装置で矯正治療を行っていると、唇の内側にブラケットが接触するため、炎症や痛みが生じることがあります。
いずれの楽器にも理想のフォームがありますが、人それぞれ歯の位置・唇や息の力などは違います。口腔内の状態を実際に歯科医師が確認しなければ、治療が可能かどうかについては診断が難しいです。
矯正をするタイミングは?
矯正を開始するタイミングについては、練習時間によっても違います。
- 毎日部活で練習を何時間も行っている方
- スケジュールで大会が決まっている方
このような方は、部活の引退直前もしくは引退後、もしくは大会での演奏が終了してから歯科矯正を行いましょう。そうしなければ通常よりも治療の期間が長引いたり、リテーナーで保定をしても後戻りを起こしやすい原因になります。
矯正治療を始めた際のポイント
矯正を開始した際のポイントをご説明します。
- 矯正装置を歯に装着したまま楽器を吹く状態に慣れること
- 歯の違和感や痛みを早く無くすこと
装置が入ると、今までの演奏方法では音が出なくなるケースがあり、不安に駆られる方は多いです。これらの違和感については大人でももちろん慣れていき、音も出るようになりますが、年齢が若い方が痛みや装置に順応するスピードは早いです。
矯正装置が当たる部分に口内炎ができやすくなるため、ワイヤーを通しているブラケット部分に上からワックスを縫ってやわらげたり、口内炎の部分には一般的に販売されている口内炎用の塗り薬や貼るタイプの口内炎パッチを使用するとより良いです。痛みは我慢せずに様々な対処法を行い、少しでも負担を軽減しましょう。
矯正したまま楽器を演奏に関するQ&A
管楽器は、歯科矯正に影響を受けやすいです。特に、クラリネットやサックスなどのシングルリードの木管楽器では、前歯の位置や不正咬合が演奏に影響を与える可能性があります。また、金管楽器(リップリード)では、長時間の唇の圧迫により前歯に負担がかかることが特徴です。
金管楽器(トランペットやホルン、トロンボーンなど)では、唇をマウスピースに長時間圧迫させるため、前歯への負担が大きいです。歯並びの問題がある場合には、吹きにくさを感じる可能性があります。
矯正装置を装着したまま楽器を演奏する場合、歯の動きを妨げる動作は避けるべきです。例えば、矯正装置によって口の形が変わる場合には、楽器の吹き方に適応するまで待つ必要があります。具体的な状況に応じて、歯科医師やスタッフに相談し、適切なタイミングで矯正治療を開始することが重要です。
まとめ
楽器を吹きながら矯正治療を行う際には、矯正の担当医、講師や顧問の先生に相談することが大切です。装置を外した際にも、装着が長いと吹きにくさを感じる方もおられますが、すぐに慣れていきます。正しい噛み合わせやきれいな歯並びになれば、歯ブラシでの歯磨きもしやすく、虫歯や歯周病のリスクが軽減します。歯や歯茎の健康を長く保ち、きちんと噛む歯にするためにも、矯正治療で歯並びを改善し、定期的にクリーニングを行うのは重要なことです。