歯と口のトラブル

舌を噛む癖はどうやって直せばいいの?

舌を噛む癖はどうやって直せばいいの?

頻繁に舌を噛むことが習慣化してしまうと、痛みや不快感だけでなく、口腔内の健康に深刻な影響を及ぼすことがあります。舌を噛む癖がどのようにして生じるのか、そしてその治し方や予防策についてご説明します。

舌を噛む癖とは?原因を理解する

舌を噛む癖とは、日常生活の中で無意識に舌を噛んでしまうことを指します。頻繁に繰り返されると舌に傷がついたり、痛みや腫れを引き起こす可能性があり、特に食事中や会話中に舌を噛んでしまうと、生活の質にも悪影響を及ぼすことがあります。

なぜ舌を噛むことが癖になってしまうのか?

舌を噛む癖が生じる原因は様々ですが、主に以下のような要因が考えられます。

  1. 不正咬合・・歯並びが整っていない場合、上下の歯が正しくかみ合わず、舌を噛んでしまいやすくなることがあります。
  2. ストレスや緊張・・精神的なストレスや緊張が原因で、無意識のうちに舌を噛んでしまうことがあります。
  3. 睡眠中の無意識行動・・睡眠中に歯ぎしりや食いしばりがあると、舌が挟まれてしまうことがあります。
  4. 口腔内のサイズ・・舌が大きい場合や、歯列に対して口の中が狭い場合、舌が歯に触れやすくなることがあります。

舌を噛む癖が引き起こすリスクと影響

舌を頻繁に噛んでしまうことは、ただの不快感だけでなく、いくつかの健康リスクを伴うことがあります。特に、舌が繰り返し傷つくことによって生じる影響は軽視できません。

1. 舌の損傷と感染リスク

舌を噛むことで、傷ができると痛みを伴い、その傷口から細菌が侵入して感染症を引き起こす可能性があります。舌は非常に敏感であり、口内の環境は湿っているため、細菌が繁殖しやすく、治りにくい場合があります。結果として、口内炎や腫れが長引くこともあるため、傷が深くなる前に適切な対策が必要です。

2. 発音や食事への影響

舌が腫れていたり、痛みがある状態が続くと、食べ物を噛む度に不快感を感じたり、正確に発音できなくなる場合があります。特に舌の動きが重要な発音(例: “た” “さ”行の発音)に支障が出ることがあり、社会生活において不便を感じることがあるでしょう。

3. 不正咬合による悪化

舌を噛む癖が続くと、元々の歯並びの不正がさらに悪化する場合があります。不正咬合によって舌を噛むリスクが高まるだけでなく、舌を噛むことが原因で歯に不自然な力が加わり、歯並びがより悪化することも考えられます。この悪循環を断つためにも、早期に原因を突き止め、適切な治療を行うことが重要です。

4. 精神的ストレスの増加

舌を噛む癖が続くことで、単なる身体的な痛みだけでなく、精神的なストレスも引き起こされます。常に舌の痛みに悩まされると、食事の楽しみが減り、会話にも自信が持てなくなり、コンプレックスになることがあります。このような心理的影響は、ストレスをさらに悪化させ、癖を助長するという悪循環に繋がることもあります。

5. 顎関節への影響

舌を噛むことが続くと、顎関節に不自然な力がかかり、顎関節症を引き起こす可能性もあります。舌を噛むときに噛み合わせが乱れ、顎の筋肉や関節に過剰な負担がかかることで、顎の痛みや違和感が生じることがあります。顎関節症は治療が難しく、長期にわたって症状が続くことがあるため、早めの対応が必要です。

これらのリスクを防ぐためには、舌を噛む癖を意識し、改善策を講じることが重要です。

舌を噛む癖の治し方

舌を噛む癖を改善するためには、原因に応じたアプローチが重要です。いくつかの効果的な治し方をご紹介します。

1. 歯列矯正による改善

不正咬合が原因で舌を噛んでしまう場合、歯列矯正が効果的です。歯列矯正は、歯の位置を正しく整え、上下の歯が適切にかみ合うようにする治療です。これにより、舌を噛むリスクが大幅に減ります。

ワイヤー矯正

歯にブラケットとワイヤーを取り付け、徐々に歯を正しい位置に動かしていく方法です。顎の骨格に大きな問題がない限り、一般的に不正咬合の改善にはこの方法が多く使われます。

裏側矯正

歯の裏側にワイヤーを取り付けるため、表からは矯正器具が見えないのが特徴です。治療中の見た目を気にする患者さんにとって、この方法は有効です。

マウスピース矯正

透明なマウスピースを使用して歯を動かす方法で、見た目に配慮しながら矯正が進められます。軽度の不正咬合や部分的な矯正に向いています。

これらの矯正治療を通じて、舌を噛む原因となる歯の不整列を正し、根本的な問題を解消することができます。

2. 口腔内の筋力トレーニング

舌や顎周りの筋肉が弱いと、舌が歯に接触しやすくなり、舌を噛むリスクが高まります。そのため、口腔内の筋力を強化するトレーニングが有効です。以下のエクササイズを取り入れることで、舌の位置を適切に保つことができ、癖の改善につながります。

口を閉じた状態で、舌を前歯の裏に押し当てるトレーニング

舌を上顎に押し当て、その状態を保持する。この動作を数回繰り返すことで、舌の筋力を鍛えることができます。舌を正しい位置に保つための筋肉を強化します。

3. 日常生活の習慣を見直す

舌を噛む癖は、日常的な生活習慣やストレスによっても引き起こされることがあります。次のような対策を日々取り入れることで、舌を噛む頻度を減らすことが可能です。

食事中の注意

食べ物を噛む際に、ゆっくりと意識的に噛むことで、舌を噛むリスクを軽減できます。特に、口に一度に大量の食べ物を入れずに、小さく分けて食べることが大切です。

ストレス管理

精神的なストレスが舌を噛む癖を助長することがあるため、ストレスを軽減するためのリラクゼーション法を取り入れることが有効です。例えば、深呼吸や瞑想、適度な運動などが挙げられます。

4. 舌の正しい位置を意識する

舌の位置が常に歯に接触していると、舌を噛みやすくなります。正しい舌の位置を意識して保つことが重要です。舌は、上顎の前歯の裏側のやや内側に、歯には触れる程度に位置させるのが理想です。普段からこの位置を意識しておくことで、舌が自然に正しい位置に保たれ、噛むリスクを減らすことができます。

5. 専門的なカウンセリング

もし舌を噛む癖が精神的なストレスや不安から来ている場合、心理的なカウンセリングが役立つことがあります。専門のカウンセラーや心理療法士に相談し、ストレスの根本的な原因に対処することで、舌を噛む癖を改善できる可能性があります。また、習慣的な行動を修正するための認知行動療法なども有効です。

これらの治し方を組み合わせることで、舌を噛む癖を効果的に改善できる可能性が高まります。患者さんそれぞれに合った方法を見つけ、専門的なアドバイスを受けることが大切です。

まとめ

舌を噛む癖は、一見大きな問題ではないと思われがちですが、放置するとさまざまな健康リスクを引き起こす可能性があります。不正咬合やストレス、習慣の見直しなど、舌を噛む原因に合わせた対策を行うことが大切です。

この記事の監修者
医療法人真摯会 クローバー歯科豊中駅前アネックス・矯正歯科
院長 中西 洋介

2015年 昭和大学 歯学部卒業。日本口腔外科学会。日本有病者歯科医療学会。日本口腔内科学会。

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クローバー歯科豊中駅前アネックス