親知らずを抜くと小顔になる?という噂があります。抜歯を行うとその周囲の骨や筋肉に影響を与えるのは間違いありません。ただし、小顔に直結するかという点について、今日は詳しくご紹介いたします。
親知らずの基本情報
親知らずは、20代前後に生えてくる最後の大臼歯で、第三大臼歯や智歯(ちし)とも呼ばれます。赤ちゃんの時に生える乳歯や12歳頃までに生える永久歯の時に親は近くにおられますが、20代前後は親元を離れていたり、わざわざお口の状態を見せるような年齢ではないため、親知らずといわれます。
トラブルが起きやすい歯
多くの人にとって親知らずは正常に咀嚼の為に機能する歯というよりも口腔内のトラブルに起因する歯です。現代人は昔に比べて顎が小さいという原因から、4本の親知らずが生えるスペースがなく、斜めや横向きになったり、半分埋まった状態で生える方、または歯根の中に眠って全く生えない方もおられます。まっすぐ正常に生えなければ、周囲の歯や歯茎に圧力をかけ、炎症や痛み、歯並びの乱れを引き起こすことがあります。また、親知らずは最も奥にあり、清掃が難しい位置にあるため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
抜歯して小顔になるという噂について
親知らずを抜歯したほうが良いということを歯科医師に言われた患者さんはおられれるでしょう。「親知らずを抜くと小顔になる」という噂の根拠は、抜歯後の顔の腫れやむくみが日数を経て引いて小顔になったと感じられるからです。一時的にフェイスラインがすっきり見えますが、親知らずを抜いたという理由で劇的に顔のサイズが変わることはありません。下記に該当する方は、実際に小顔になったと僅かに感じられます。
頬骨やエラの部分の骨が少し痩せる
歯を抜くとそれまで土台で支えていた顎の骨(歯槽骨)が噛む刺激を伝達せず、痩せて小さくなります。上の親知らずは頬骨の下、下の親知らずの位置はちょうどエラにあたる部分に生えてきます。頬骨やエラの目立つ方が親知らずを抜くと、頬骨やエラの突出感の目立ちが減り、小顔効果を感じることがあります。
顎や頬の筋肉が痩せる
歯を抜くと、それまで親知らずに加えられていた咬合力が加えられません。顎や頬の筋肉が痩せ衰えることによって、小顔効果を感じられる場合があります。片側噛みという片方で噛む癖があれば筋肉の発達に左右差があり、抜歯後に両側できちんと噛めるようになれば左右均等の筋肉になります。
親知らずが歯茎の中に埋まっている埋伏歯(まいふくし)の方や、親知らずで咀嚼していない方は、筋肉がそもそも発達していないため、抜歯しても期待はできません。
小顔のために歯を抜くのはNG
小顔になりたいからと問題の起きていない親知らずや他の歯を抜くことはNGです。どんな人工歯よりも、天然歯は機能や見た目ともに長けていて、メンテナンスを行えば健康に長く保つことが可能だからです。
親知らずの抜歯は注意が必要
下の顎の一番奥に斜めに生えている親知らずを、事前の検査が不十分のまま抜くと、下顎にある神経や血管に傷をつけます。出血や腫れ、感染のリスクもあるため、精密検査をしっかりと受けること、歯科医師の治療計画をきくことが必要です。また、術後のケアを怠れば、感染症や炎症が長引くことがあります。親知らずの抜歯は注意せねばならず、必ず抜く前にどのように抜くのか、どんなリスクがあるのか等把握してから臨みましょう。
まとめ
「親知らずを抜いたら小顔になる」という噂は部分的には正しいものの、劇的に変化は起こらないものです。親知らずの抜歯は、主に口腔内の健康を保つための処置であり、小顔効果を目的とするのはよくありません。フェイスラインをすっきりさせるには、偏りのない食生活や日常のケア、運動も取り入れ、全体的アプローチを行うことが大切です。