歯と口の基礎知識

お酒を飲むと歯が溶ける?アルコールの歯への影響

お酒を飲むと歯が溶ける?アルコールの歯への影響

「お酒を飲むと歯が溶ける?」という疑問は、お酒が好きな方にとって気になるトピックです。お酒が歯に与える具体的な影響や、そのメカニズム、予防策についてご説明します。

お酒が歯に与える影響とは?

お酒と歯

お酒を飲むことが歯にどのような影響を与えるかについて考えたことはありますか?アルコールは多くの人々にとって楽しいひとときの一部ですが、その一方で口腔内の健康に対する潜在的なリスクも存在します。

特に、頻繁に飲酒する方にとっては、その影響を理解して、ダメージを与えない飲み方を知ることが重要です。

酸性飲料としてのお酒

酸性のお酒

お酒は一般的に酸性飲料として分類されます。酸性度が高い飲料は、エナメル質を溶かす可能性があります。エナメル質は歯の表面を保護する硬い層ですが、酸に弱いという特徴があり、エナメル質が損なわれると、虫歯や知覚過敏などの問題が発生するリスクがあります。

ワインやビールなど、多くの種類のアルコール飲料は酸性度が高く、特にワインはpH値が3~4の範囲にあるため、酸性度が強い飲み物です。このような飲料を頻繁に摂取すると、エナメル質が溶けて薄くなってしまう可能性があります。

エナメル質が薄くなるとどんなリスクがあるの?

天然歯の構造

エナメル質が薄くなると、以下のようなさまざまな問題が発生する可能性があります。

1. 虫歯のリスクの増加

エナメル質は歯の一番外側の層で、歯を保護する役割を果たしています。エナメル質が薄くなると、酸や細菌から守るためのバリアが弱くなり、虫歯が発生しやすくなります。

2. 刺激に対して敏感になる

エナメル質が薄くなると、その内部にある象牙質が露出しやすくなります。象牙質には神経に直接つながる細管が多く含まれているため、冷たいものや熱いもの、甘いもの、酸っぱいものに対する感受性が高まり、歯がしみるような不快感を感じることがあります。

3. 変色が起こる

エナメル質が薄くなると、象牙質の色が透けて見えるようになります。象牙質はエナメル質よりも黄色っぽい色をしているため、見た目が黄色く変色して見えることがあります。この変色は、審美的な問題として気になる方も多いでしょう。

4. 摩耗と亀裂

エナメル質が薄くなると、歯が弱くなります。これは、噛む力や歯ぎしり、食いしばりなどによる摩耗や亀裂が発生しやすくなることを意味します。亀裂や摩耗が進行すると、割れや欠けが生じ、修復が難しくなる場合もあります。

5. 歯周病のリスク増加

エナメル質が薄くなると、歯茎との境目に汚れが溜まりやすくなります。歯垢は歯周病の原因となる細菌の塊です。歯周病が進行すると、歯周組織が次第に炎症によって破壊され、その結果、骨が歯が抜けてしまうこともあります。

アルコールによる口腔乾燥のリスク

アルコールは利尿作用があり、体内の水分を減少させるため、口腔乾燥を引き起こすことがあります。唾液は口腔内を洗浄し、食物の残りかすや細菌を除去する役割を果たしていますが、唾液の分泌が減少すると、これらの汚れや細菌が付着しやすくなります。

口腔乾燥は、虫歯や歯周病のリスクを高め、口臭の原因にもなります。アルコールを摂取する際には、適切な水分補給を心掛けることが重要です。

歯が溶けるメカニズム

酸性の飲料を飲むと、エナメル質の表面が酸によって溶け出すことがあります。エナメル質が溶けて薄くなると、その内部の象牙質が露出し、知覚過敏を起こすことがあります。

また、酸性飲料を飲んだ後にすぐに歯を磨くこともエナメル質にダメージを与える可能性があります。これは、酸によって一時的に軟化したエナメル質が歯ブラシによって削られてしまうためです。そのため、酸性の飲料を摂取した後は、少なくとも30分から1時間待ってから磨くようにしましょう。

お酒を楽しみながら歯を守る方法

飲み会

お酒を楽しむことと歯の健康を保つことは両立可能です。以下のポイントを参考に、口腔内の健康を維持しながら飲酒を楽しんでください。

  • 水を飲む・・アルコールを飲む際には、同時に水を飲むことで口腔内の酸性度を中和し、唾液の分泌を促進します。
  • 定期的な歯科健診・・定期的な健診とクリーニングは、エナメル質の摩耗や他の口腔内の問題を早期に発見し、対処するのに役立ちます。
  • 飲酒後の口腔ケア・・お酒を飲んだ後は、少なくとも30分待ってから歯を磨くことが理想的です。これにより、エナメル質が再び硬化し、歯磨きによるダメージを防ぐことができます。
    ・酸性度の低い飲料を選ぶ・・可能であれば、酸性度の低いアルコール飲料を選ぶことも一つの方法です。例えば、ビールよりもワインの方が酸性度が低い場合があります。

酸性度の強いお酒、弱いお酒

酸性の酒

お酒の酸性度は、そのpH値によって分類されます。以下に、酸性度が強いお酒と弱いお酒の例を挙げてみます。

酸性度の強いお酒

酸性度の強いお酒は、一般的にpH値が低く、口に含むと酸味を強く感じます。

1. 白ワイン(pH 3.0 – 3.4)

  • 例:ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング
  • 酸味が強く、口の中でフレッシュな感覚が広がります。

2. シャンパン(pH 2.9 – 3.5)

  • 酸味と炭酸ガスの組み合わせが特徴です。

3. サワー系カクテル

  • 例:ウイスキーサワー、ラムサワー
  • レモンやライムジュースを使うことで酸性度が高くなります。

酸性度の弱いお酒

酸性度の弱いお酒は、一般的にpH値が高く、酸味をあまり感じないものが多いです。

1. ビール(pH 4.0 – 5.0)

  • 例:ラガー、エール
  • 比較的中性に近く、酸味はあまり強くありません。

2. 赤ワイン(pH 3.3 – 3.8)

  • 例:カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー
  • 酸味はありますが、白ワインほど強くはありません。

3. ウイスキー(pH 4.0 – 4.5)

  • 例:バーボン、スコッチ
  • 蒸留酒であるため、酸味はほとんど感じません。

お酒の酸性度はその種類や製造方法によって異なります。酸性度が強いお酒は、口の中でフレッシュな感覚や酸味を強く感じるものが多く、白ワインやシャンパン、サワー系カクテルが代表的です。一方、酸性度が弱いお酒は酸味をあまり感じず、ビールや赤ワイン、ウイスキーなどがあげられます。口腔内の健康を考える際には、酸性度の強いお酒の摂取量に注意することが大切です。

まとめ

酸性度の高いお酒は、エナメル質を溶かすリスクがあり、虫歯や知覚過敏、変色などを引き起こす可能性があります。これらのリスクを避けるためには、飲酒時には水分補給を心掛け、酸性飲料を摂取した後は時間をおいてから歯を磨くようにしましょう。

また、定期的な歯科健診を受けることで、問題が起こっても早い時期に発見し、適切な対策を行うことで、お酒を楽しみながらも歯の健康を守ることが出来ます。

この記事の監修者
医療法人真摯会 クローバー歯科豊中駅前アネックス・矯正歯科
院長 中西 洋介

2015年 昭和大学 歯学部卒業。日本口腔外科学会。日本有病者歯科医療学会。日本口腔内科学会。

▶プロフィールを見る

クローバー歯科豊中駅前アネックス