毎年春頃になると、学校で歯科検診が行われます。検診結果は子供に紙面で手渡されますが、そこに「要注意乳歯」と書かれていた場合、子供の歯はどのような状態なのかご説明します。
目次
「要注意乳歯」とは何か?
学校の歯科健診で「要注意乳歯」と指摘された場合、子供の乳歯に何かの問題があるという意味になります。
問題と言っても、ちょうど永久歯との生え変わりの時期にあたり、乳歯が既にグラグラしていたり、乳歯を押しのけるように永久歯が生えてきているという場合に「要注意乳歯」にチェックが入ります。
そのまま自然に抜けるのを待っても問題はない場合が多いのですが、稀に将来の歯並びに悪い影響が起こる可能性があり、早めに抜歯した方が良いというケースもあります。
乳歯の役割とは?
1. 永久歯が生えるためのスペースを確保する
乳歯は、永久歯が正しい位置で生えてくるためのスペースを確保します。虫歯等で早期に乳歯を失うと、永久歯が生えるためのスペースが狭まり、永久歯が隣の歯と重なって生えてしまうリスクがあります。
2. 正しい発音と咀嚼
乳歯は正しい発音の形成と食物の咀嚼にも関わっています。乳歯の異常は、発音に問題を起こし、食事を噛むことに困難さを引き起こすことがあります。
3. 健康な永久歯の基盤
乳歯が虫歯や歯周病になると、後に生えてくる永久歯の健康にも悪影響を与えます。
「要注意乳歯」の指摘にはこんな可能性も・・
1. 虫歯になる
虫歯は歯の最も一般的な病気で、歯磨きが不十分であったり、砂糖の多い食事が原因で発生します。
2. 歯の損傷が起こる
転んだり遊んでいてぶつかったり、スポーツでぶつかったり、落下や衝撃などで、歯が割れたり折れたり、抜けることもあります。
3. 歯並びに問題が起こる
不正咬合や歯の重なりなどが起こり、将来的に歯列矯正が必要になる可能性があります。
4. 歯の発育異常
歯の形成不全や発育の遅れなど、歯の成長に関わる問題が起こる可能性があります。
「要注意 乳歯」の指摘を受けた場合の対応策
学校歯科健診で「要注意乳歯」の指摘を受けた場合、以下のような対応策が考えられます。
1. 速やかな専門家の診断
学校健診の結果を持参して、速やかに歯科医を訪れ、子供の口腔状態について詳細な診断を受けることが重要です。
2. 予防策の強化
正しい歯ブラシの動かし方の確認、食生活の見直し、定期的な歯科健診の受診など、予防策を強化します。
3. 治療計画の策定
問題に応じて、歯科医と相談の上、適切な治療計画を策定します。
学校歯科検診でチェックされる内容
「要注意乳歯」以外で、検診ではどのような記号が記載されるのでしょうか? 検診結果に記載されるアルファベットや記号の意味についてご説明します。
歯に関わる項目
CO(要観察歯)
初期の虫歯が疑われる状態です。歯の表面が白く濁ったり薄い茶色になっているのは初期虫歯のサインです。痛みはありませんが、そのまま虫歯が進行すると、歯に穴があいてしまいますので、早めに歯科を受診しましょう。
C(虫歯)
歯に虫歯の穴が開いている状態です。治療中の歯や詰め物が外れてしまっている場合もここに含まれます。虫歯がさらに進行すると、歯を大きく削って被せ物を被せなければなりませんので、出来るだけ早く治療を受けましょう。乳歯の場合は虫歯を放置すると永久歯の歯並びが悪くなる場合があります。
○(治療が完了している虫歯)
既に詰め物や被せ物で治療済みの歯です。
歯茎に関わる項目
GO(歯周疾患要観察者)
軽度の歯肉炎が認められます。
歯肉炎は、歯と歯茎の間に汚れが溜まって、細菌感染を起こすことで生じます。軽度の歯肉炎では痛みはありませんが、歯茎が赤くぷよぷよした状態になります。GOであれば、毎日の歯磨きで歯の根元を意識して優しく磨いていくことで、健康で引き締まったピンク色の歯茎に戻すことが可能です。
G(歯周疾患要処置者)
歯茎に歯肉炎が起こっており、歯石がついている状態です。歯石は歯磨きでは落とせませんので、歯科医院でクリーニングを受けて歯石もきれいに取り除いてもらう必要があります。
歯肉炎はそのまま放置すると歯周病になってしまうため、正しい方法で歯磨きを行うことも重要です。
歯垢に関わる項目
前歯に歯垢がついている状態です。歯垢が残っている部分には歯ブラシの毛先が当たっていないということになりますので、正しいやりかたで歯磨きを行いましょう。また、歯並びが悪いと磨き残しが出来て歯垢になってしまう場合があります。
顎関節症に関わる項目
顎関節症の代表的な症状である「口が開きにくい」「口を大きく開けると顎が痛い」「口を開けると顎骨で音がする」などのチェックを行います。稀に開口障害で口が極端に開きづらいケースがあります。
このような顎関節症が疑われる症状がある場合は歯科医院にご相談ください。
歯並びに関わる項目
歯並び、噛み合わせが正常であるか確認します。
学校歯科検診で指摘される歯並びとは?
- 上顎前突・・上の前歯が前方に突出した歯並びで、一般的に出っ歯ともいいます
- 下顎前突・・上の前歯より下の前歯が前方に出た歯並びで、一般的に受け口とも呼ばれます
- 叢生・・歯が重なってガタガタになった歯並び。八重歯も叢生に含まれます。
- 開咬・・上下の前歯が噛み合わず、すき間ができた状態の歯並び
- 正中離開・・大きい前歯同士の間にすき間がある歯並び。一般的にすきっ歯ともいいます
- 過蓋咬合・・上の歯列が下の歯列に大きく被さり、下の歯がほとんど見えない状態の歯並び。
そのほかの項目
- 粘膜の異常・・粘膜に腫れやできものがある
- 小帯の異常・・小帯(前歯の中央にあるスジ)の形に異常がある
- 過剰歯・・通常より歯の本数が多い
- 先天性欠損・・生まれつき永久歯の本数が数本足りない
- 癒合歯・・隣の歯同士がくっついた状態で1つの歯になっている
- エナメル質形成不全・・歯の表面のエナメル質が少ない歯で虫歯になりやすい
学校の歯科検診で「要注意乳歯」に関するQ&A
「要注意乳歯」とは、子供の乳歯に何らかの問題があると指摘される状態です。これには、永久歯との生え変わり時期に乳歯がグラグラしている場合や、永久歯が乳歯を押しのけて生えてきている場合が含まれます。稀に、将来の歯並びに悪影響を及ぼす可能性があり、早めに対処する必要がある場合もあります。
「要注意乳歯」の指摘を受けた場合の対応策には、速やかな専門家の診断、予防策の強化、および治療計画の策定が含まれます。学校の検診結果を持参して歯科医を訪れ、子供の口腔状態について詳細な診断を受けることが重要です。また、予防策の強化としては、正しい歯磨きの方法の確認や食生活の見直しなどが挙げられます。
学校歯科検診では、歯に関わる項目(要観察歯、虫歯、治療が完了している虫歯)、歯茎に関わる項目(歯周疾患要観察者、歯周疾患要処置者)、歯垢、顎関節症、歯並びなど、多岐にわたる内容がチェックされます。これにより、子供の口腔内の総合的な健康状態が評価されます。
まとめ
学校の歯科検診で「要注意乳歯」という指摘を受けたら、それは子供の乳歯に何らかの問題があるサインです。単に「そろそろ抜けそうです」というお知らせの場合もありますので、この指摘を受けた場合は、まずは落ち着いて、子供の口腔状態を歯科で診てもらうことが大切です。
正しいブラッシングや食生活の見直し、定期的な歯科検診を受けるなど、日常の予防策を強化することも忘れずに。早期の対応が、お子様の健康な笑顔を守る鍵となります。