インビザラインの基礎知識で大事なのは、マウスピース型の矯正器具であること、それ以外に補助器具を使用する可能性があることです。今日は詳しくご紹介いたします。
目次
インビザラインの矯正とはどんな治療?
インビザラインは透明で見えにくいマウスピース型の矯正器具をご自身の歯並びに被せて装着して歯並びの治療を行います。予め歯の動きを予測して作製したマウスピース(アライナー)を患者さんご自身で交換し、1枚あたりおおよそ0.25mmずつ歯を動かしていきます。
八重歯や歯のデコボコ(叢生)、すきっ歯(空隙歯列)、奥歯を噛むとお口が閉じられない(開咬)、歯並びの前後が一部入れ替わる(交叉咬合)などの歯並びの乱れを治療するのに向いています。もちろん、出っ歯(上顎前突)、受け口(反対咬合)なども程度により治療を行えますが、お口の状態を診断してから出ないとわかりません。
インビザライン矯正がスタートするまでの流れ
- カウンセリングで患者さんのお悩みを伺う
- 患者さんが治療を希望された場合、精密検査を受ける(iTeroという3Dスキャンでお口の中を撮影する※iTeroでのスキャンはカウンセリング時に行う場合もあります)
- 歯並びのデータを元にクリンチェックという専用ソフトで患者さんの治療計画を作成する(マウスピースの枚数、交換時期、治療の期間など)
- クリンチェックで歯の動き方のシミュレーションを行い、担当医と患者さんでの最終段階を共有する
- クリンチェックを元にマウスピースが作製され、いよいよ矯正治療がスタートする
インビザラインの基礎知識①アライナー
インビザライン治療の際に装着するマウスピースを、矯正治療ではアライナーと呼びます。アライナーは基本的に0.5mm程度の薄さで半透明のプラスチックであるため、ワイヤー矯正と異なり歯列矯正中と周囲からわかりにくいのが特徴です。食前にアライナーを患者さんが取り外し、食後歯磨きを終えてからまた装着します。色素の濃い食べ物をかなりの頻度で食べて歯磨きせず装着をしない限り、交換時期は決まっている為、審美性の高い矯正器具です。
インビザラインの基礎知識②アタッチメント
アタッチメントはインビザライン矯正の際に歯の表面につける突起です。歯科用の樹脂で作製され、矯正力をかけるという目的から行います。アタッチメントにも関連しますが、インビザライン矯正の際に痛みを感じやすいのは下記のような時です。
- 初めてアライナーを装着した
- 歯が動いている
- アライナーを取り外す際に誤って爪がアタッチメントに引っかかった
初めてアライナーを装着した
アタッチメントを付着した歯にアライナーを装着すると、歯の痛みというよりぎゅうぎゅうと締め付けられたような違和感を感じます。違和感を身体が痛みと捉え、アライナーの締め付けに関しては大人でも2~3日、長くとも1週間くらい経てば慣れてしまう方が多いです。
歯が動いている
インビザライン矯正中は、歯列にじわじわと矯正力がかかっている状態です。矯正力に痛みを感じる方がおられますが、初めてのアライナー装着時と同様にすぐに慣れていきます。
アライナーを取り外す際に誤って爪がアタッチメントに引っかかった
アライナーを取り外す際、爪がアタッチメントにひっかかると痛みを感じる方がおられます。そのため、アライナーは奥歯の位置からゆっくりと外していくという癖をつけておきましょう。
インビザラインの基礎知識③装着時間
ワイヤー矯正は自身で取り外しができないため、24時間矯正器具をつけています。対してインビザラインはご自身で取り外せるため、装着時間をご自分で守らなければなりません。
一日22時間以上装着しないと歯並びは若干後戻りを起こし、矯正治療の効果が減少します。その結果、治療計画通りに歯が動かず、治療期間が延長になり、費用もさらに掛かる場合があります。
インビザラインとワイヤーを併用するケースもある
歯並びによってはインビザラインのみで治療を行うのが難しい場合があります。
- 歯並びの乱れが重度である
- 噛み合わせに左右差がある
これらの場合は歯にブラケットをつけてワイヤーをする矯正を併用しつつ、インビザラインを行うことがあります。
隙間を閉じようとする矯正力に負けて奥歯が移動する
マウスピースの閉じようとする矯正力に奥歯の力が負け、奥歯が空いているスペースに移動して前方に傾く状態をアンカレッジロスと呼びます。ワイヤーを併用すると、奥歯を固定したまま、アンカレッジロスになるリスクを減らすことができます。
歯茎に埋もれている歯は矯正力をかけにくい
奥歯は歯茎に埋もれて高さが短いことがあります。マウスピースは歯をきちんとつかんで歯の動きをコントロールする矯正器具です。奥歯が歯茎に埋もれていると掴む面積が少ないため、矯正力がかかりません。ワイヤー矯正を併用すると、歯を引っ張り上げて高さを出してくれるため、その後マウスピースで矯正することも可能になります。
逆に、歯に歯茎に向かって圧力を加える場合は、ワイヤー矯正よりもマウスピースの方が優れています。歯を動かす方向によってケースバイケースで、より適切な装置を選択して使用します。
インビザライン矯正に関するQ&A
インビザライン矯正の特徴は、透明で目立ちにくいマウスピース型の矯正器具を使用することです。これにより、従来のワイヤー矯正器具に比べて審美的な見た目を保ちつつ矯正治療が可能です。また、患者さん自身でマウスピース(アライナー)を交換し、徐々に歯を動かしていく方法を採用しています。さらに、食事時や歯磨き時には取り外しが可能で、日常生活における不便さを軽減します。
インビザライン矯正がスタートするまでのプロセスは、まずカウンセリングで患者さんの悩みを伺い、精密検査を行います。これにはiTeroなどの3Dスキャンで口腔内を撮影したり、シリコンで歯並びの型取りをすることが含まれます。その後、3Dモデルを基に治療計画を立て、歯の動き方のシミュレーションを行います。この全プロセスはクリンチェックと呼ばれ、治療計画の承認後に必要なマウスピースの作製に進みます。
インビザライン矯正中にアライナーを装着する際、初めての装着時には締め付けられたような違和感や軽い痛みを感じることがあります。この違和感は通常、数日から1週間程度で慣れます。また、アライナーを取り外す際には、爪がアタッチメントに引っかかることで痛みを感じることがありますが、これは適切な方法で慎重に取り外すことで軽減できます。
まとめ
- アライナーは自身で取り外し、交換も行う
- 診断によってはアタッチメントをつける必要がある
- 装着時間を守らなければ歯が動かず治療期間や費用が延長する可能性がある
- ワイヤー矯正を併用する治療法も選択することがある
このようなことを頭に入れたうえで歯列矯正の治療法を選択しましょう。
インビザラインに関する基礎知識について、以下の研究結果を参照して説明します。
1. 【Tuncay (2017)】によると、インビザラインは従来の固定式矯正治療とは異なり、診断データを使用して目的とする歯の動きの三次元画像を作成し、その治療目標を達成するためにカスタムメイドの透明なプラスチック製アライナーを使用します。
2. 【Papadimitriou et al. (2018)】のシステマティックレビューでは、インビザラインシステムの臨床的有効性に関して評価されています。このレビューは、非抜歯治療の軽度から中程度の不正咬合に対してインビザラインが従来の矯正治療に比べて実行可能な代替方法であることを示しています。
インビザラインは、特定の矯正治療において従来の方法と比較して有効な代替手段であり、カスタマイズされた透明なアライナーを使用して治療を行います。ただし、治療の範囲や効果には限界があるため、個々の症例に応じた適切な治療計画が必要です。